ヒメコンニャクウオについて
ヨメ取材メモ memo by his wife
2019年7月、日本橋三越のステーショナリーで個展「平島鉄也いきもの図鑑」がありました。展覧会では可能な限り在場してお客さまとお話しますが、この展覧会では「デモンストレーションを」とのことで、会場でWAX原型作りをしていました。そのとき作り始めたのがこのヒメコンニャクウオ。深海生物にはもともと興味があって同年同じく深海生物メンダコのオブジェを完成させたばかりでした。原型づくりの資料として深海生物の本を持参。理想としてはその動物のいろんなアングルの写真が欲しいのですが、展覧会まえのバタバタの中で用意できませんでした。深海生物の本も、作品制作用の資料として作られたモノではありません。デモンストレーションで制作する生き物は、本の中から、全身が写っているか、制作に耐えうるディティールまで見えているか、作りたくなるような魅力的な生き物であるかといったハードルを越えた生き物、ヒメコンニャクウオが選ばれました。会場ではハードワックスと呼ばれる彫刻のできる蝋に、歯医者さんが使うようなスパチュラ(へら)で彫刻してゆきます。原型制作には時間をかけるタイプなので、デモンストレーション中にはもちろん完成しませんでしたが、展覧会後に完成までなんとかこぎつけました。ヒメコンニャクウオという生き物にはおなかに吸盤あるそうです。作品では吸盤部分に磁石を埋め込み表現したことで、緊張感のある姿勢で自立できています。また、この作品では初めて「エレカラ」という技法で着色をしています。メッキに近いような技法です。真鍮で鋳造したモノを工房で銀メッキをかけた後、エレカラ着色しました。目は古び液で黒くしています。
手のひらに乗る小さな作品ですが、深海魚特有の質感や動きを捉え、異様な雰囲気を放つ作品です。中之沢美術館の展覧会に出品した際はポスターにも使っていただき、実物より大きく大きく印刷されていて愉快でした。